ギャラリー
村上統哉さんが「今後の日本の海を守る漁師になりたい」という夢を抱きながら、福井県立大学海洋生物資源学部に短期入門した様子を紹介します。
期間:平成30年8月20日(月)、8月21日(火)
福井県立大学海洋生物資源学部 小浜キャンパス
福井県小浜市学園町1-1
はじめに
近年の水揚げ量の減少から、将来の漁業に不安を覚え、それを解決するためには養殖の研究や技術開発が不可欠だと考えました。そして自らがその研究に取り組み、将来の日本の漁業と食文化を守りたいという思いを持っています。
今回の入門でお世話になったのは、福井県立大学海洋生物資源学部 准教授 細井公富 先生 です。海洋生物資源学部が所在する小浜キャンパスは、若狭湾に面した小浜市の小高い丘にある日本海側唯一の水産・海洋系の学部です。

小浜漁港

福井県立大学小浜キャンパス

細井先生の研究室

鯖復活プロジェクト   
かつて若狭湾では鯖が大漁に獲れ、小浜から京都への道は「鯖街道」と呼ばれるほど、小浜は鯖で賑わいました。
しかし、昭和49年には小浜市の田烏巾着組合だけで、3580トンの漁獲がありましたが、近年ではわずか1トン前後しかなく、小浜の鯖は過去の栄光になりつつありました。
鯖の漁獲量の推移

田烏地区の海
そのような中、平成27年4月、「御食国若狭と鯖街道」が日本遺産第1号に認定されました。小浜と京都をつなぐ道は、世界へ誇るべき道であり、鯖がつないだ文化は、世界に誇るべき文化であると、再び脚光を浴びました。それをきっかけに、かつて鯖が大量に水揚げされた場所、小浜市田烏の美しい海で、漁業者、漁協、高校、大学、県、市の一体的な協力のもと「鯖、復活プロジェクト」が動き出し、鯖の養殖がはじまりました。
天然マサバは、多獲期は安価に取引される大衆魚です。それに対して、小浜養殖マサバは卸値で\3,000-/kg、小売値にすると1尾あたり数千円の高値になります。つまり、養殖コストの低減はもちろん、高付加価値化も必須となってきます。
日本国内で有名なブランド鯖の例として、天然物(\5,000-/kg以上の高値)では大分の「関サバ」、宮城の「金華サバ」、養殖物(〜\3,000-/kg)では鳥取の陸上完全養殖でアニサキスの心配のいらない「お嬢サバ」、長崎でハーブ添加餌で育てた「長崎ハーブサバ」等があります。
小浜・養殖サバのブランディングも進んでおり、酒粕での育成に着手したところ、県内外で甘味のある味わいが大変好評だったことから、2018年からは「小浜よっぱらいサバ」のブランド名に統一して出荷しているそうです。

「小浜よっぱらいサバ」養殖場の見学
小浜市田烏地区に、9つの生け簀で鯖が養殖されています(2018年)。養殖場では、産学官が連携し、IoT技術を活用して養殖の効率化を図る取り組みが始まっています。水温と餌の量など、漁業者の経験や勘に頼っていたノウハウをデータ化して、蓄積したデータを活用し、今後の養殖技術の確立につなげたいと考えているそうです。具体的には、養殖生け簀に1時間に1回測定可能な装置を設置し、水温と酸素濃度、塩分濃度をモバイル回線でサーバーに送信。さらに漁師が餌の量や時間、場所などを情報端末に入力し、水温に合った餌の量、餌を止めるタイミングなどをデータ化し、関係者で情報を共有する取り組みです。
小浜のブランド鯖ということで、出荷数が決められています。一部の鯖は、漁師の方によって、船上で神経締め(脊髄破壊)をして鮮度を保ちます。

へしこ蔵の見学   
へしこは昔から、冬場の保存食として若狭の各家庭で作られてきました。10月から3月に冬場の脂ののった鯖を糠と塩で仕込み、夏の暑い日を越し、約1年、樽の中で漬け込んで熟成させた加工食品が「鯖のへしこ」です。夏を越えることで一気に発酵が進み、糠でタンパク質が分解され、アミノ酸の旨みが引き出されるそうです。蔵の中にはたくさんの樽が並べられ、じっくりと発酵熟成されています。

福井県立大学 海洋生物資源臨海研究センターの見学
研究棟には、魚病実験室、産卵制御実験室、調温水実験室などがあります。魚病実験室では、隔離された環境で、魚病の感染のしくみや病原生物の研究を、産卵制御実験室では、水温や明暗周期を制御して有用魚介類の成熟や産卵の仕組みを解析するそうです。調温水実験室では、水温を何段階にも調節して海洋生物の成長や行動の解析を行うことができるそうです。実験室で学生さんの実験を見学させていただきました。
飼育実験棟には、培養・飼育スペース、標本測定室、飼料実験室、冷凍・冷蔵庫などが配置されています。培養・飼育スペースは様々な海洋生物の飼育実験を、標本測定室は飼育した海洋生物の簡単な測定を行います。飼育水槽の中には、サバやトラフグ、淡水魚のアユカケ等、色々な魚が飼われていました。サバは回遊魚なのでみんな同じ方向を向いて泳いでいました。
水槽内で泳ぐサバの様子を動画でご覧ください。 「saba.mp4」

定置網 網上げ体験
今回お世話になったのは、小浜市宇久の定置網です。定置網は、海中の定まった場所に網を設置し、海岸から沖合に向けて張った網で沿岸に回遊する魚群を誘い込むことで漁獲します。(左)網上げ漁船に、多量の氷を載せて出漁の準備をしているところです。(中)準備が終われば、出港です。まだ早朝4時前なので、辺りは真っ暗でした。(右)定置網に到着しました。落し網を端からひたすらたぐり寄せるという地道な作業で、魚を追い込みます。
(左)少しずつ明るくなってきて、回りの景色が見えるようになってきました。(中)網を上げながら、船上でおおまかに魚の選別作業をしておきます。(右)最後はクレーンで一気に引き上げます。クレーンであげた魚は鮮度を保つために氷で冷やします。
動画でご覧ください。 「amiage.mp4」

仕分け作業・出荷
魚の種類、大きさごとに細かく分けて、トロ箱に入れていきます。この時期の収穫は少ないそうですが、大漁の時は漁船で直接魚市場へ行き、そこで仕分けをすることもあるそうです。
この日は、アカイカ、シイラ、サバなどが獲れました。

魚市場、セリの見学
セリは小浜市漁業センターで行われます。この日は、網を船で引き回す漕刺網と定置網の魚があがっていましたが、魚の量は少ないそうです。アオコ、アカウニ、アカイカ、アジ、アワビ、ウマヅラハギ、カジキ、カマスガザミ、サザエ、サバ、サワラ、シイラ、スズキ、ヒラメ、レンコダイ、甘鯛、真鯛、若狭ぐじ が並べられていました。
セリが始まると、威勢の良いかけ声が場内に響き渡り、どんどん競り落とされていきます。自分が網上げ体験をした宇久定置の魚もセリにかけられ、買われていきました。

おわりに
今回の作文にも書いた「日本の海を守る」ためには、環境に優しい養殖漁業は必要だと感じました。また、その養殖を支えるためにも、地域の産学官が一体となって「小浜よっぱらいサバ」のブランド化に努力しておられる様子を見させてもらい、とても勉強になりました。また、早朝からの定置網漁体験、そしてその魚が出荷、競り落とされるまでの一連の流れを見学できたことは、とてもいい経験になりました。