平成29年3月18日(土)に開催されたセミナーの様子を紹介します


 講義1
「電波天文学と分光学」 小林准教授
【分光学と天文学の結びつき】マイクロ波・ミリ波を用いた星間分子の分子分光を野辺山の電波望遠鏡を用いて観測している。近赤外レーザーを用いたトリチウム含有水の分光と反応追跡を行う。
【電波望遠鏡】電波でどんな周波数の吸収があるかを調べる。分子固有の吸収によって星間空間にある分子を明らかにする。分子のおかれている状態も知ることができる。
【星間分子】恒星間の希薄な空間に存在する分子。1940年の可視光によるCNの発見以来約160種類が見つかっている。ほとんどが電波天文学による同定。
【宇宙にある分子の存在を知るには】実験室で測定したマイクロ波分光による周波数データと電波天文データの結果を比較する。同じ周波数であれば、分子の存在が確認できるが、実際はドップラー効果により少しずれる。


 実習「電波天文データを見てみよう、星間分子を見つけよう」
JVO (Japanese Virtual Observatory)について。ALMAだけでなく他の望遠鏡によるデータも集められている。今回はゲストとしてデータを利用。研究目的であれば、家でも利用することができるが、ファイルサイズは大きい。アプリケーションの使用方法、データの利用方法について。 実際の電波天文データを用いて、各自で星間分子を探す。



  「天文学者に質問」
Skypeによる通信。国立天文台チリ観測所の澤田剛士さんに画面越しに質問。仕事の内容やチリでの生活について、また観測施設の様子もLiveで見せていただいた。時差は12時間。
     


 講義2
「宇宙論」 栗本教授
【素粒子による宇宙の研究】電磁波以外で宇宙を研究する手段として最近注目されているものは、ニュートリノ、重力波、暗黒物質。 いずれも普通の物質とはほとんど相互作用がなく、途中にある物質の影響を受けにくい。
【ニュートリノについて】電気を持たない。重さが非常に非常に小さいが、0でないことを梶田隆章さんが発見した。電子の100万分の1程度以下、幽霊のように物質中を(ほとんど)すり抜ける。
【ニュートリノの実験と結果】ニュートリノはごくまれに、物質と反応することがある。大量の物質を用意して、そこにニュートリノをあてて反応を調べる。スーパーカミオカンデでは、水中の電子とニュートリノが反応。電子が猛スピードで飛び出し、チェレンコフ光を放出。実際の測定による太陽からの電子ニュートリノの検出量、宇宙線からのニュートリノ量は、予想を大きく下回った。この結果を、ニュートリノ振動を用いて説明した。
【ニュートリノを研究して宇宙についてわかること】星の最後の爆発(超新星爆発)の様子、太陽内部の様子、地球内部の様子、ビッグバン直後の宇宙の様子などがわかる。
【重力波とは】巨大質量が運動すると、空間のゆがみが波のように(光速で)伝わる。しかし、重力波の影響は,原子サイズよりも微少な距離の変化で、とても小さい。よって、長い距離を進む光の干渉を用いて測る。観測できれば、ブラックホールの正体が解明できるかもしれない。神岡のKAGRA。
【暗黒物質(ダークマター)とは】宇宙には、光(電磁波)で見えない思い物質が多量に存在する。正体は不明だが、ブラックホールなどの天体ではなく、大質量の素粒子であることは確定的。神岡で暗黒物質観測(XMASS)が運用されている。



 「とことんセミナー」
全体で大学での研究や入試のことについて聞いた後、グループに分かれて学生生活や普段の学習、進路選択について話しあい、アドバイスをもらった。

 まとめ 閉講式   
栗本先生、小林先生、アシスタントの学生の方々から参加生徒にエールと本日の感想、アドバイスをいただきました。
アンケート記入の後終了・解散