ギャラリー
Oさん「ウナギの完全養殖を成功させる研究者になりたい」という夢を抱きながら、国立研究開発法人水産総合センター増養殖研究所の田中 秀樹氏に短期入門した様子を紹介します。

期間:平成27年8月17日(月)〜19日(水)

水産総合センター増養殖研究所 .(三重県度会郡南伊勢町))

ウナギやマグロはおいしいけれど高い。卵を産ませて成体まで育て、また採卵する完全養殖ができればウナギやマグロも安く食べられるようになるのではないか。完全養殖できる技術を開発した増養殖研究所に短期入門して、勉強しました。
うなぎは養殖場で見ると凄まじくえさを食べる印象がありますが、幼生であるレプトケファルスはなかなかエサを食べません。現在はサメの卵をエサにしていますが、これを発見するまでは生かしておくことができなかったそうです。
増養殖研究所の前で
まずはじめに、ウナギ量産研究グループの田中グループ長さんからウナギの種類や、現状を聞きました。ヨーロッパウナギやアメリカウナギはわざわざサルガッソ海まで出かけて産卵することや、ニホンウナギやオオウナギはグアム島の近くまで言って産卵すること、幼生は水深200mくらいのところで採取されたことなど詳しく勉強できました。
施設見学では、様々な水槽を見せてもらいました。
クロコ(シラスうなぎより成長し、背中が黒くなったもの)の餌やりは左のディスペンサーを使います。成長や食欲に合わせ、指示された分量で給餌します。
水槽をキレイな状態に保つのは大切なこと。スポンジで水槽の隅々まで洗います。これが結構きつかった!
ウナギの幼生レプトケファルスを観察します。特製の水槽に入れ、顕微鏡での観察です。
目玉や骨、ひれなど、レプトケファルスの様子がよくわかります。
また、エサを与えたところ、お腹の中にエサが取り込まれていく様子を観察することができました。
顕微鏡を操作させてもらい、おもしろそうな所を探します。
小さいレプトケファルスはこのような青い光の下で育てます。人が入っているので明るいけれど、実際には真っ暗に近い状態で飼育しているそうです。光が青いのは、もっとも深海まで届く光が青だから。クロコの時とは違うエサで、ドロドロしているものをディスペンサーで少しずつ、固まらないように与えます。水槽にもたくさん工夫があります。この水槽は半円形で、底の部分には水流を起こす工夫がされています。給餌の時は水流を止めますが、終わったら水を流し、水槽や水がよごれないようにしています。
落語にもうなぎをつかむ話がありますが、元気なうなぎはなかなかつかめません。
うなぎがどの位育ったか調べることも重要な作業のひとつです。うなぎに麻酔をかけ、1匹ずつ体長と重さを量ります。いくらうなぎが好きでもうなぎの顔は覚えられないので、うなぎにはチップが埋め込まれています。そのチップを読み取り、個体識別しているそうです。
そして最後はしっかり記録に残していきます。
第2世代のうなぎもたくさんいましたが、うなぎの完全養殖技術の開発は、そのほとんどが飼育作業だそうです。飼育していく過程で新たな工夫をし、発見がある。
現在ニホンうなぎは絶滅危惧種です。完全養殖技術が確立することで、ニホンうなぎを絶滅から救うことができます。そして完全養殖の技術の上に、うなぎの品種改良の道が開けてくるそうです。
残念ながら、完全養殖技術が確立してもうなぎが安くなることは難しいそうです。ただ、飼育途中での生存率を上げることができれば安定的に供給できることができるようになります。